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- めんたいこ物語 原料編
【原料編】第1話
「卵のサイズ」
明太子、いわゆる助惣鱈(すけそうだら)の卵には大きいものや小さいものがあります。
なぜいろいろなサイズの卵があるのでしょうか?
大きな要因として次のようなものがあげられています。
【原料編】第2話
「親年齢」
すけそうだらの場合、4年で成魚と言われていましたが、生体系が変わり、
今では2年魚でも卵を持つと言われています。
● 14~15年魚のものもいるそうです。
● 魚体は年ごとに大きくなり、8年魚以上のものは卵だけで600~1kg近くになります。
※漁獲可能な資源としては3年魚以上を指します。
【原料編】第3話
「成熟度」
すけそうだらの卵は成熟するにつれて、次第に大きくなります。
●卵巣内の卵粒子も大きくなる。
●水分が増え排卵に備える。
【原料編】第4話
「近海子と冷凍子」
辛子明太子は、大きく分けて2つの原料から作られます。
【近海子】
近海で獲れたスケトウダラの生の卵を、一旦工場で塩たらこに加工した原料。
※改めて、凍結保存した塩たらこを解凍し、辛子調味液に漬け込み辛子明太子にします。
【冷凍子】
漁獲したスケトウダラの生の卵を、卵のまま凍結し保管した原料。
※冷凍保存した卵を解凍し、工場で塩たらこを作り、辛子調味で辛子明太子に1度に仕上げます。
近海子の評判が良かったのは昔の話です。
凍結処理が未熟な時代の冷凍の生たらこ原料【冷凍子】は、『緩慢凍結』で凍結され、
卵の粒が壊され、粒々感もなく、良い塩たらこ・辛子明太子が出来ませんでした。
この時代の【近海子】は品質も良いと評判でした。
しかし、今では凍結処理の技術が進歩し、このような問題点は『急速凍結』で解決されました。
『急速凍結』された原料は、一度の解凍で製品化され、品質の良いたらこ・明太子が
1年中食べられるようになりました。
【原料編】第5話
緩慢凍結と急速凍結
『急速凍結』により品質は改善しました。
物質は、外から内へ凍っていきますが、0℃~-5℃の温度帯では、温度の低下がゆっくりになります。
氷の結晶が大きく成長しようとする、この温度帯を「最大氷結晶生成帯」と言います。
『急速凍結』とは、この温度帯(0℃~-5℃)を、30分以内で通過させる事で
氷の結晶の成長を小さくします。
『緩慢凍結』とは、凍結に時間が掛かる事で、
氷の結晶が大きくなり 食品の細胞が内部から破壊されてしまいます。
緩慢な凍結で組織が破壊された魚卵(たらこ・明太子等)は、その後塩蔵しても、
粒子感のある塩たらことはなりません。
「最大氷結晶生成帯」を早く通過させる『急速凍結』で、氷の結晶は小さくなり品質も良くなりました。
【原料編】第6話
原料の鮮度
1.魚の鮮度
魚の鮮度は、魚を獲ってから船に上げるまでの
時間で決まります。鮮度の悪い魚から、鮮度の良い卵は採れないので、魚の鮮度は大切です。
魚が多すぎた場合は、網を揚げるのに時間が掛かり過ぎてしまい、鮮度をおとしてしまいます。
逆に少なすぎた場合は、長時間網を引っ張る事となり、同様に鮮度をおとしてしまいます。
ちょうど良い魚群にあたると、鮮度が良い魚を船に上げる事ができます。
2.卵の鮮度
卵の鮮度は、船に上がった魚から卵を取り出して、凍結させるまでの時間で決まります。
魚を獲った船で卵を処理する場合、卵を取り出して凍結する作業のペースにあわせ、魚の量を調整できます。そのため、魚を獲ってから卵を凍結させるまでの作業を、少ない時間で行えるので、鮮度を
保つ事ができます。
( 参考:漁獲編第4話「漁場に行ってみよう!2」 )
陸上の工場や他の船で卵を処理する場合、
処理できるペースと魚を獲る量を上手く調整しないと、途中で待ち時間ができてしまい、鮮度をおとしてしまいます。
3.作業の順番
もともとは、魚の身が目的で漁をしていたので、古い工場では先に魚の身を処理する設備になっています。その様な工場では、卵の処理は後回しにされ、待ち時間が長くなり、鮮度をおとしてしまいます。
最近は、卵の価値が見直され、卵を取り出して凍結する作業が優先される様になり、鮮度を保つ事ができる様になってきています。
(参考:漁獲編第5話「船内での加工」)
【原料編】第7話
卵の元の色も色々
同じ海域・時期の同じようなサイズでも個々の色目は異なります。
辛子明太子の色目は一般的には赤い色ですが、もともとの原料にも薄い赤い色から
赤黒い色目のものまで多種多様に存在します。
すけそうだらの原料は、人間の肌の色と同じように様々な色目があるんです。ですので、
一概には言えないのですが、大まかな傾向として、卵(卵巣)の色は【成熟度】により変化しています。
■ 成熟度による変化
原料編第3話「成熟度」でご紹介させて頂いた様に、産卵期に向けて、すけとうだらの体の中で、卵巣が成熟していきます。その成熟過程で、卵巣の色も変化しています。
■ 黒い原料もあるんです。
原料の中には、紫~黒色の物もあるんです。 これらのものは、通常の商品には使わない様に、
選別しています。以前は、赤く着色した明太子が多く、着色する事により多少の色の違いは均一化されていましたが、最近では着色しない「無着色」を望まれるお客様が増えてきています。
無着色製品を多く作り出すには、その分多くの原料を扱い、厳しく選別しなければ均一な商品は
できないんです。
【原料編】第8話
明太子の粒の数は?
■ 原料の粒子数
すけとうだらの卵巣は、2袋が1対となっており、この1対を1腹と呼んでいます。
1腹の卵数は、魚体によりとバラツキがあるんです。
■ 雌の体長と卵数比較
卵の皮付きで約60~80gであれば大体20~30万粒です。
また、雌の魚体重量に対し、卵巣重量は15~20%程です。
この膨大な粒数は、どうやって数えているのでしょうか?
10万を超える数を数えるとなると、気が遠くなります‥。
実は、数g当りの個数を数えて、それを重量分倍数しているんです。
それでも、直径1~2mmの粒子を数えるのって、結構大変なんですよ。
【原料編】第9話
ヒゲについて
■ 腹膜について
すけとうだらの卵巣には、黒色の紐状のものが付着しています。
これらは、腹膜(通称:ヒゲ)と呼ばれる内臓の一部なんです。
胆汁と同様、食べても害があるものでは有りませんが、見た目が悪いので、
製造工程において取り除く様にしております。
写真でお分かり頂ける様に、見た目が毛髪に似ています。
「毛髪が入っていた!」とお問い合わせ頂く場合、実はこのヒゲの取り除きもれである事が
ほとんどなんです。
【原料編】第10話
胆汁について
■ 胆汁について
すけとうだらの内臓にも、人間と同じく「胆のう」があります。
すけとうだらを網の中等で、無理な力がかかった場合に、内蔵が破裂する事があります。
内臓の中でも、胆のうが破裂すると、その中にある「胆汁」が卵巣はじめ、
内臓の各部位に付着してしまいます。
そうなったら、大変です。
この「胆汁」は緑色をしており、卵巣の一部が緑色に染まってしまうんです。
胆汁が付着した部分は、悪くなっている訳では無いのですが、見た目に気持ち悪く、
製造工程において取り除く様にしております。
【原料編】第11話
「スケトウダラについて」
【原料編】第12話
産み残し卵
◆ 産み残し卵 ◆
ごく稀にでは有りますが、明太子の中に茶褐色の棒状のものが混入している事があります。
スケトウダラは、数回に分けて産卵をするのですが、産卵されなかった卵が
新しい卵に覆われた場合に、この様になる事があるんです。
産卵されなかった古い卵組織であり、
人体には無害ではありますが、正直言って見た目に気持ち悪いです 。
【原料編】第13話
骨について
明太子の中に、プラスチックが入っていた!
というご指摘を頂く事がありますが、多くの場合は、スケトウダラの骨なんです。
漁獲の時に、無理な力がかかったため、スケトウダラの骨が折れて、卵巣に刺さってしまう事があるんです。製品化の仕上げの段階で、目視や金属検知器等で異物を見つける様にしていますが、骨は、機械では発見できないんです。
【原料編】第14話
アニサキスについて
他の魚同様にスケトウダラの内臓には、寄生虫がいる場合があります。
【アニサキス】
人の体内では成長・繁殖は行わないものの、虫が胃腸に食いつくと激しい腹痛などの症状が現れます。
しかし、冷凍する事で死滅してしまいます。
明太子には冷凍工程があるので、人体被害はありません。
【ニベリニア】
アニサキス同様、スケトウダラで多く見られる寄生虫で、人体被害はありません。
【原料編】第15話
すけとうだらの卵は、海水に浮くか?沈むか?
卵が海水中で浮くのか?沈むのか?
卵は泳ぐ事ができないだけに、その違いは魚にとって大きな意味を持っています。
厳しい自然環境の中で生き抜くために、魚の卵は色々な知恵を働かせます。
それを分類すると、大きく4つに分かれます。
その他、体内で卵をかえす魚や子育てする魚等の例外もあります。
昆布に付着した「ニシンの卵」を塩漬けした「子持ち昆布」や、一粒ずつがコロコロしている「イクラ(鮭の卵)」、それに辛子明太子に形状が似ている「からすみ(ボラの卵)」を考えると、それぞれの卵のイメージはつかめるのではないかと思います。
スケトウダラの卵は、バラバラで海中を漂いますので、「分離性浮遊卵」といわれる種類になります。